みんな知らない、知財の国際条約について
2021.03.03
外国で独占的にビジネスの基盤を欲しい人は、パリ条約とPCTを、使いこなす必要があります。
でもほとんどの人が知らないと思います。
そもそも知財っていうだけでも難しいのに。
パリ条約とPCTには、さまざま取り決めがされていますが、皆さんが知っておく必要があるのは、優先権と優先期間という内容だけなんですね。
まず、パリ条約とPCTってなあに?
と言うところから説明します。
パリ条約は、1883年にパリで合意された知財をみなさん保護しましょうね、というルールで、日本としては、最初に加盟した知財関係の条約です。
当時の日本は、明治時代で、本格的に国際競争に参加しようとしていたんですね。
いまでは、世界のほとんどの国が加盟している、知財で言えば、基本中の基本の国際条約です。
一方で、PCTというのは、パリ条約に比べたら最近できた条約で、特許を世界的に同時に、保護するためルールなんですね。
PCTは、そのルール作りに、日本も参加していたので、すごく細かいルールになっていて、できた当初は、あまり使われませんでした。
ちょっと、厳しすぎたんですね、ルール自体が。
日本の特許法を、世界の特許法に比べると、1回期限をすぎちゃうと、もう助けませんよという、考え方なんですが、世界は、もっと緩やかで、お金を払えばOKですよという国もあります。
でも、PCTは、使いやすくなる改正を、繰り返してきて、最近は、多くの国で積極的に使われています。
外国人に特許をカンタンに盗られちゃう?
パリ条約とPCTは、外国に特許を出願するための基本的な2つのルートです。
まず、特許になるための条件に、先に出願した者であること、というルールがあります。
特許って、初めに考えて申請した、早いもん勝ちのルールなんですよね。
同じ人が、同じ日に考え出した、同じアイディアがあったとします。
このアイディアを、早く申請した人のみが、特許を取れるんですね。
これは、世界の他の国でも、いまは同じ考え方です。
だから、他の国で誰かが、特許を出願しちゃうと、もうダメなんです。
その人に特許を盗られちゃうんですね。
もし国際条約がなかったら、大変なことに!
そうしたら、世界で特許を取りたい人は、なるべくすぐに、世界中で申請しないといけません。
その国の他の人に、権利を盗られてしまうんですね。
それだと、ハードルが高いですよね。
翻訳したり、外国の書類の準備とか、費用とか、いろんなことに時間がかかります。
しかも、どの国に出したいのかって、どこの国に、その発明のビジネスがマッチするか、考えないといけないですよね。
しかも、そもそも、その発明が、特許になるかどうかもわからない段階で、大きな判断をしなければならないのです。
大体、1か国に外国出願するのに、100万円かかるとしたら、10か国に出願したら1000万円です。
特許になるかどうかわからない発明に、一気に、1000万円を出せますか?
それも、早い者勝ちのルールでやるって、不可能ですよね。
そこで、パリ条約で、始めて、優先権という考え方ができました。
パリ条約ルートのメリットとデメリット
パリ条約ルートでは、日本出願をしたら、その日から12ヶ月以内に外国出願をすれば、優先的に保護されます。
つまり、はじめにパリ条約に加盟している国に出願をしたタイミングで、パリ条約に加盟している外国での出願も、優先的に保護するようにしましょう、ということにしたんです。
だから、優先権っていうんですね。
メリットとしては、各国ごとの実務に合わせた外国出願ができます。
デメリットは、まあ、それでも最初の出願から12ヶ月で全ての出願国を決定する必要があります。
やっぱり、12ヶ月で全ての準備をするのは、難しいですね。
外国出願をするにあたって、パリ条約とPCTを、使いこなす必要があります。
皆さんが知っておく必要があるのは、優先期間という内容です。
このルールを、知っておくだけで、外国へ出願を行う必要最低限の知識があるといえます。
PCTって何だ?
パリ条約ルートでは、日本出願をしたら、その日から12ヶ月以内に外国出願をしなければ、優先的に保護されません。
それを助けるために、できたのが、PCTなんですね。
PCT出願は、出願の束としての機能を持つ出願です。
つまり、1件のPCT出願は、複数の外国出願から成り立っているという前提になっています。
そして、申請するのは、PCTで決められた受理官庁というところです。
つまり、申請からして、通常の特許出願とは違うんです。
受理官庁が、PCT出願を受領すると、国際的な手続き段階が始まります(国際段階)。
準備する書類も、結構複雑です。
PCTルートのメリットとデメリット
ただし、メリットとしては、出願国の判断を先延ばしにできるんですね。
出願の束が、それぞれの国へ移行するのは、原則30ヶ月なんですね。
それまでは、出願国の判断を先延ばしにできます。
国際段階では、調査してくれるので、その審査結果を参考にできるんですね。
各国は、国際段階の調査結果を参考にしますので、おおよそ特許がとれるかどうか、前もってわかる訳ですね。
ですから、せっかく外国に出願したのに、特許にならなかったということも、多くは生じません。
デメリットは、もし外国に出願する国数が同じであれば、パリ条約ルートよりも、PCTのほうが高額になります。
ちょうど、国際段階の分だけ、余分に費用がかかっちゃうんですよね。
結局、どっちがいいのか?
でも、パリ条約ルートとPCTルートって、どっちをつかったら良いか、よくわかんないですよね、という方が結構いらっしゃいます。
これは、簡単に判断できます。
まず、いくつの外国に出願したいか決めるべきです。
発明の技術が、伸びそうなエリアは、その道の専門家であれば、大体わかりますよね。
大体、5か国未満の国に出願する場合は、パリ条約をお勧めしています。
PCT出願は、費用が掛かるので、多くの国に出願するのは良いんですが、そうでない場合は、費用が国際段階の分だけ、余計にかかります。
欲張っている人には
この時に、よく見受けられるのが、欲張っちゃう人です。
もう、世界中に、私の発明は必要です、という人もたまにいます。
こういう場合は、もう少し、分析して、どこの国が生産国になりそうですか?と聞いています。
知財の権利行使で、一番重要なのは、製造を止められるかどうかです。
つまり、まずは、どこの国で、その製品が作られるかを、検討すべきです。
実際には、発明者自身が、どこの国で作りますか?というのが、大事な問いかけです。
そして、販売国の中で、どこの国が、最も重要なマーケットになりますか?とも聞いています。
販売国の中で、最も重要なマーケットには、出願すべきです。
類似の製品が、いま、どこの国で売れていますか?ということも、大事な問いかけです。
特許の権利行使の結果として得られる、損害賠償金は、相手側の売上金が計算の対象となります。
相手側の売上金が、大きくないであろう国で、特許をとっても、あまり意味がありません。
これらの質問に、現段階で答えられない場合は、PCTルートを、お勧めしています。
各国に移行する、30ヶ月以内に、この点の検討を、出願人にはお願いしています。
パリ条約ルートでは、日本出願をしたら、その日から12ヶ月以内に外国出願をしなければ、優先的に保護されません。
まずは、パリ条約ルートを当てはめてみて、それではサポートできないものをPCTルートにしてみるというのが、良いかもしれません。
御社の製品を、
海外の悪質なパクリから守ります。