アメリカ特許制度の重要なポイントを10個あげてみた
2021.05.21
実は、アメリカ特許法って、世界の特許法とは、結構、違うところが多いんです。
日本は、ヨーロッパの特許法に似ていますが、アメリカとは大きく異なります。
ですので、日本の法律がわかるからと言って、アメリカの特許法が分かると思うと結構、危険ですよね。
今日は、まず、日本と大きく違うところを中心に説明します。
もちろん、日本の法律をご存じない方も、日本の法律も含めて説明しますから、大丈夫ですよ。
全部で10箇所の違う点をピックアップしてみました。
改正後のアメリカ特許法に対応しています。
(1)審査請求制度がない
審査請求というのは、特許を申請しただけでは、審査は開始せずに、特別の請求をしないと、何も始まりませんよ、という制度です。
アメリカには、審査請求制度はないんですよね。
日本やヨーロッパの特許制度では、採用されています。
つまり、アメリカでは、特許が出願されると、審査が直ちに開始されることとなります。
昔も、日本は、審査請求制度はなかったんです。
でも、昭和の時代は、特許出願が急増してしまったタイミングがあって、その時に、日本は審査請求制度を開始しました。
日本の審査請求の料金は、非常に高額なんですよね。
つまり、お金を高くすれば、出願する件数が減少するのではないかと、わざと高くしたんです。
これは、結構、外国の出願人から評判が悪くて、日本の特許費用は世界でも最も高いと言われてしまっている、原因になっています。
(2)宣誓書が必要
昔の法律では、発明者のみが、アメリカ出願人になることができたんですね。
発明者を雇用する企業が名前で特許を取得するためには、発明者が特許出願するとともに、譲渡する書類を提出して、企業へ特許を受けるための権利を譲渡する必要があったです。
この法律は、現行法では改正されていて、企業が出願人になれるようになっています。
しかし、引き続き、発明者の宣誓書の提出は必要です。
何を宣誓するかというと、自分がオリジナルの発明者ということを、宣誓しなければならないのです。
欧米では、こういった宣誓が非常に一般的です。
裁判でも、先ずは、聖書に手を置いて宣誓しますし、重要な政府の職に就くときも、宣誓したりしますよね。
これは、法律の建付けとして、自ら選んで、意図して、行っていますというのを、明らかにする必要があるのです。
特に、何か間違ったことをしてしまった際に、自ら選んで、意図して、行ったのかどうかが、アメリカの民事訴訟法上、罰則に大きな影響を与えるんです。
(3)冒認手続きが大きく変わった
旧法の先発明主義から、現行法では、先発明者の先願主義に転換したことに伴い、冒認手続きが大幅に変わりました。
ちょっと、難しい単語が出てきましたね、「先発明主義」というのは、先に発明した人に特許を認める主義です。
アメリカは、長らくこのような制度を取っていました。
反対の制度は、何かというと、「先願主義」です。
この先願主義は、先に願書を出した人に、特許を認める主義です。
つまり、先に発明しても、出願が遅れてしまうと、他の人に権利が取られてしまうんですね。
日本やヨーロッパは、この先願主義です。
先進国では、アメリカだけが、長らく先発明主義だったんですね。
これにより、80年代90年代の日本企業は、大変苦しめられました。
「先に発明したのは、私です!」って、あとから、突然、特許が成立してしまう事態が多発したんですね。
まさに、法律の不備だったんですが、当時、日本企業にマーケットを席巻されていた、米国政府は、そのような制度をそのまま維持したんですね。
そのおかげで、何十兆円以上の賠償金を、アメリカ企業は、得ることが出きました。
それが、ようやく変わったのです。
これに伴い、むかしあったインターフェアランスという制度が終わって、新規のDerivation Proceedingという制度が設立しました。
かつてのインターフェアランスは、本当によく宣言されたんですが、先願主義になったあとは、「先に発明したのは、私です!」って、言われなくなりました。
(4)継続出願がある
米国特許法では、親の出願の利益を持ったまま、他の出願に継続することができます。
これは、出願人には、すごく有利なんです。
なぜかというと、出願人の判断で、いくらでも継続出願が増やすことができるのです。
日本やヨーロッパでは、一つの出願の範囲に纏まらないものに関しては、分割できる制度になっていますが、そのような理由はいらないのです。
そして、一つのアイディアを、多角的に権利化するのに、この継続出願はよく使われます。
お金を稼げる特許=継続出願といっても、過言ではないと思います。
この制度を、いかにうまく使うかが、特許のマネタイズでは非常に重要です。
継続出願には、出願の内容に新規事項を追加する一部継続出願も可能です。
新規事項以外に関しては、親の出願の利益を持ったまま、継続することができます。
(5)審判制度がちょっと違う
日本にも審査官による拒絶に対する不服審判という制度がありますが、アメリカでも、最後の拒絶理由通知に対して、不服を申し立てることができます。
日本とアメリカで違う点は、アメリカでは、最後の拒絶理由通知の後に、アドバイザリー通知が発行することがありますが、日本ではありません。
また、アメリカの審判では、原則として、補正は認められず、新たな証拠の提出もできないため、日本に比べると制約が厳しいと言える。
そのため、多くの場合に、アメリカの場合は、審判には行かずに、継続出願で対応するように、アドバイスすることが多くなります。
(6)情報開示義務がある
米国の特許の出願人は、自ら知っている先行技術文献を審査官に情報開示する義務を負っています。
特許庁を欺く意図をもって情報開示を怠った場合は、詐欺として権利行使ができなくなります。
これは、日本にはない特殊な制度ですので、気を付けなければいけません。
多くの日本の大企業が、情報開示を怠ったとして、せっかく特許を取得しても、その後に、権利行使を諦めなければいけないこととなっています。
この点は、別の動画でも説明していますので、参考にしてください。
(7)仮出願制度がある
仮出願とは、通常の特許出願の要件を満たさない、簡易な形式による出願をいいます。
この仮出願は、発明は完成しないものの、請求項や明細書を準備する時間などがない場合に、出願日を確保して出願に対して優位な立場を確保することができます。
この仮出願制度も、日本にはありません。
ベンチャー企業や中小企業に、是非、活用していただきたいのは、この仮出願制度です。
日本人の出願人では、ほとんど利用されていません。
しかし、うまく活用することで、特許のマネタイズがぐっと、身近になるのです。
(8)付与後レビューが新設
旧法では、異議申し立てのような制度は、アメリカにはありませんでした。
この「レビュー」というのは、特許の有効性について、もう一度、見直すというものです。
日本にはかつてありましたが2003年に廃止され、ヨーロッパには、現在でもあります。
異議申し立てとは、特許が発行された後の、一定期間に、第三者が特許の有効性について、意義を提起することです。
アメリカの異議申し立ては、ヨーロッパの制度にかなり近いものです。
(9)当事者系レビューが新設
日本には、特許を無効にする制度がありますが、米国では新設されました。
当事者レビューは、特許または刊行物に基づいて、新規性や進歩性の理由に限り、特許の有効性について、見直します。
発明として成立するか、記載要件、公用の事実、特許権者の行為に関する事実は、当事者系レビューでは、判断されません。
日本の無効審判の庁費用が、5万円弱なのですが、アメリカの当事者系レビューは、300万円近くの庁費用がかかります。
もちろん、これに弁護士費用が掛かりますので、実際には、1000万円くらいかかってしまいます。
アメリカでは、登録になると、お金を掛けないと潰せない場合が多々あります。
(10)再発行制度がある
再発行は、明細書に誤りがあるために、その特許が実施不能または無効である場合に、訂正を求める制度です。
日本にも訂正審判という、同様の制度があります。
日本の訂正審判は、発行された特許の内容を、出願当初の明細書の記載の範囲内で、訂正する手続きになります。
もっとも大きな違いは、アメリカの再発行は、登録から2年以内であれば、請求項の拡張もできるし、継続出願もできるので、審査が再オープンさせて、別の権利を取り直すこともできます。
特定の技術分野のお客様には、全件、再発行制度を利用することをオススメしているほどです。
それほど使いやすい制度ですが、日本の出願には、ほとんど利用していません。
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