今後の特許翻訳のマーケット

2021.03.05

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翻訳ビジネスは、知財のお仕事の中でも数少ない儲かるお仕事ですが、やり方を考えないと非常に難しい時代になってきました。
具体的には、外国語から日本語への翻訳を中心に行っている方は、直接、企業や特許事務所へアクセスしていく営業能力が必要になってくるでしょう。
また、第二外国語を積極的にビジネスに取り込んでいく、戦略性も必要になってきています。
特に1990年代以前は、知財の翻訳ビジネスは、いわゆる濡れ手に粟の、非常に儲かるビジネスでした。
背景にあるのが、知財の専門性と翻訳の専門性という、2つの専門性がある仕事でしたので、非常に付加価値があったためです。

劇的に減少

ところが、特に、特許翻訳の業界では、国内出願数が2006年以降、劇的に減少してきました。
それと同時に、翻訳の仕事も大きく減少するトレンドが始まりました。
それに拍車が掛ったのが、グーグル翻訳をはじめとしたインターネットを利用した機械翻訳でした。

昔から、機械翻訳ソフトはあったのですが、数万円かそれ以上の翻訳ソフト購入という初期投資があったので、導入は限定的でした。
しかし、ネット上で無料で機械翻訳が使えるようになると、ほとんどの出願人が機械翻訳を試すようになったのです。
最近では、日本知的財産翻訳協会でも、独自に機械翻訳研究会なるものを立ち上げて、特許の機械翻訳について考察しています。

そうはいっても、機械翻訳は、誤訳が多いので、権利書としての役目のある特許書類の翻訳には向かないのではないかという意見もあります。
確かにそれはその通りで、機械翻訳をそのまま利用している出願人はそれほど多くは無いかと思います。

これから無くなる翻訳依頼

翻訳には、実は二種類の仕事があって、一つは外国語から日本語に翻訳するものと、もう一つは日本語から外国語へ翻訳するものがあります。
この中で、翻訳の仕事の依頼の最も多いものは、英語から日本語に翻訳するものだったのですが、これが機械翻訳に入れ替えられて来ています。

特に、特許の出願人の側や特許事務所などのお仕事を発注する側の担当者は、日本語をチェックする能力は非常に高いです。
英語能力も、日本語を英語にする能力はそこまでは高くないのですが、すでにある英語の文章を機械翻訳で翻訳した日本語の文章と比較して、確認することくらいはできる英語能力を持っている方は、数多くいます。

つまり、知財の専門性と翻訳の専門性という、2つの専門性がある付加価値が、外国語から日本語に翻訳するものに関しては、価値が下がってしまったんです。
そのため、まず外国語を機械翻訳して、そののちにポストエディットして、日本語の特許文章に修正することで、外部の特許翻訳者を雇う必要は無くなってきました。
いままで、ボリュームとしては、英語から日本語に翻訳する知財翻訳の方が多かったのです。しかし、今は、仕事を発注する側が機械翻訳して、ポストエディットすることによって、この分の仕事が失われて来ています

今後の特許翻訳者に必要なもの

翻訳ビジネスは、やり方を考えないと非常に難しい時代になってきました。
それでは、英語以外の外国語を日本語に翻訳する仕事と、日本語を英語へ翻訳する仕事は、まだまだ当分安泰なんですか、というと、それもどうかなと心配な面もあります。
ここで、戦略性や営業能力を持たないと、息の長い収益には繋がらないと思います。
まず挙げられるのが、いままでは、翻訳を行う方はフリーランスで、仲介の翻訳会社から直接仕事を受注していたんですね。

これから起きる業界の変化としては、翻訳会社を仲介せずに、発注する側が直接、翻訳を行うフリーランスへアクセスすることが考えられます。
そのため、フリーランスの翻訳者は、直接、企業や特許事務所へアクセスしていく方が良いと思います。
つまり、日本国内の翻訳企業がどんどん衰退していくトレンドがもう始まっていると思います。

生き残る翻訳者

そうはいっても、個人のフリーランスの翻訳者が、直接、企業や特許事務所へアクセスしていくのは大変だし、仲介してもらえないと、そもそもコネクションがないですよね。
しかし、いま翻訳者を抱える翻訳会社も、非常に厳しい環境なんです。
特許の出願人の側や特許事務所などのお仕事を発注する側は、実は、海外の翻訳会社や翻訳者へ直接アクセスするような時代なんですね。

特許の出願をする企業や特許事務所の方とお話しすると、海外の翻訳会社へ直接、翻訳を発注するケースがどんどん増えています。
理由は、国内の仲介翻訳会社の仲介費用が外国と比べて高いためです。

いま、企業の知財に関する予算が厳しいのがもう当たり前の時代になっています。
企業側の考えとしては、日本国内の翻訳会社に高い料金で依頼をするよりかは、日本語のできる海外の翻訳会社へ依頼しても、全然、問題ないです。
そのようなトレンドでは、翻訳会社の仲介能力に、個人のフリーランスの翻訳者は、どんどん頼れなくなって来ると思いますし、独立して仕事を取りに行く対応が必要になってくると思います。

たとえば、個人のフリーランスの翻訳者の方は、SNSでの集客や、外国の翻訳会社から、仕事を受任するなどのアプローチをしてみてはどうでしょうか?

レッドかブルーか

もう一つは、英語以外の外国語の習得も考えなければいけませんよね。 
英語圏以外の国で、日本企業が進出が進んでいる国は、引き続き、翻訳の受注が多く、付加価値が高いです。
たとえば、日本企業の進出が進んでいる東南アジア諸国の言語では、英語の単価に比べ数倍でも受注できてしまうと思います。

知財翻訳者の方たちは、言語のエキスパートの方が多いので、第二外国語に専門性を見つけていくというのも、非常に戦略性が高いと思います。
もちろん、複数の言語を習得するのは難しいことですが、少なくとも東南アジアの言語から日本語への翻訳であれば、東南アジアの言語の読みができれば良いと思います。

なので、自分に取って一番ハードルの低いところから初めて見るのが良いでしょう。

翻訳ビジネスは、やり方を考えないと非常に難しい時代になってきました。
そのため、フリーランスの翻訳者は、直接、企業や特許事務所へアクセスしていく営業能力や、第二外国語に専門性を見つけていく戦略性が必要になってきています。

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