弁理士資格よりも必要なもの

2021.03.25

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一昔前は、知財の業界に入るのならば、弁理士の資格があるのと、ないのでは、大きくステータスや収入が違いました。
いまの知財業界を見てみると、弁理士の資格はどのようなメリットがあるでしょうか?
かつては、弁理士になると高収入が保証されていました。
東京の高額納税者に、毎年、弁理士が入っていたほどです。
弁理士会の定額報酬制が廃止されてから、弁理士報酬が激減しています、多分、ピークの半分くらいの報酬に落ち込んでいます。
そのため、過去10年で弁理士の平均年収は、100万円以上ダウンしているのではないでしょうか。
これは、他の業界に比べても、大きな落ち込みなんだと思います。

半分に落ち込んだパイを、2倍の競争相手で競う

出願代理できるので、独立することがカンタンなのではないか、と思われる方がいるかもしれません。
日本は、出願数がピークだった2006年から、国内の特許出願件数が半分ほどに落ち込んでいます。
一方で、登録されている弁理士数は、過去20年の間で、およそ2倍以上になっています。
つまり、半分に落ち込んだ少ないパイを、2倍の競争相手で競うこととなります。

非常に独立するのが、現在の難しい経済環境です。
実際に2000年に入ってから、登録している弁理士で、事務所経営をしている弁理士の割合は減り続けています。

企業は、社員が弁理士かどうかは、気にしない

企業内弁理士になると、知財部内で無資格の人と比べて出世できるのではないかと、と思われる方がいるかもしれません。
いまの日本企業は、弁理士であるかどうかは、ほとんど気にしなくなってきました。
その証拠に、弁理士会の登録会費も、かつては、会社が負担してくれていましたが、現状ではほとんど補助がありません。

大きな理由としては、30年ほど前は、企業内弁理士は登録弁理士の10%もいなかったのですが、いまは20%以上の弁理士が、企業に勤務しています。
増えちゃったんですよね、企業に勤務する弁理士が。
その人たち全員の弁理士会費を、会社が負担すると、結構な費用になります。

かつては、知財部の本部長が自らの弁理士名で、年間1000件くらい出願する企業もありました。
しかし、特許庁から、代理している弁理士が、きちんと内容を確認しているか、指導がありました。
現在では、出願代理するのは、きちんと内容を確認できる、外部の弁理士が担っています。
いまは、社内の弁理士が代理することは、企業内ではあまりないので、弁理士に合格したものの、登録していない企業弁理士は多いです。
未登録なので、名刺には弁理士と記載できないと、嘆く人が多くいるほどです。

社会的なステータス

弁理士になると、バッチがもらえて、社会的なステータスがある、たとえば、特許庁へ入るときに、警備員の方に敬礼してもらえるメリットがあるかもしれません。
でも、弁理士のステータスが本当にあるのかわかりませんが、もうずいぶん前から、電子申請になってしまいましたし、面接も特許庁のビデオ面接システムを使うので、登庁する機会は滅多にありません。

弁理士資格よりも必要なもの

資格がある人はそう考えるかもしれないが、やはり資格があった方が、知財の業界では、つぶしがきくに決まっている、と思うかもしれません。
私は、弁理士になって、もう30年近くになりますが、これからの知財ビジネスには、弁理士資格よりも必要なものがあると思っています。

弁理士資格があれば、食べていけると考えている方がいるとしたら、ハッキリそれは幻想です、と言えます。
日本人は、資格主義で、なにか資格取ろうと、思う方がいまでも多いかもしれません。
まずは資格をとる前に、知財の世界で、いったい何をしたいのか、しっかりと考えるべきです。

自らの意思で弁理士の登録の抹消を行う人

一昔前は、知財の業界に入るのならば、弁理士の資格があるのと、ないのでは、大きくステータスや収入が違いました。
いまの弁理士業界を見てみると、果たしてメリットがあるでしょうか?
資格をとる前に、どのような仕事をしたいのか、まずは考えてみることが必要です。
そうしないと、資格に何年も費やした上に、がっかりすることになります。
ここ10年の、自らの意思で弁理士の登録の抹消を行う人は、年間で200人近くいます。
もちろん、合格しても登録しない人は、それ以上います。

知財の業界で、どのような仕事をしたいのか、まずは考える必要があります。
それでは、いったい、どのような仕事があるのでしょうか?
また、今後は、どのような仕事が増えていくでしょうか?

新しい形態

知財の世界も、さまざまな場所で働く人が増えてきました。
現在では、大体のところ、企業弁理士、事務所勤務弁理士、事務所経営弁理士に、それぞれ20%づつの弁理士が、働いています。
あとの40%は、法律事務所や大学やNPOなどさまざまです。
仕事の内容も、企業内の知財の発掘、申請書類の作成、事務所経営、知財法務と、業務内容が、ここ30年でずいぶん増えてきました。

月8件がノルマ

かつての弁理士は、ほとんどが特許明細書の作成をしていたんですよね。
特に、2000年代の日本の特許出願件数は50万件以上ありました。
一方で、当時、登録している弁理士は、5000人くらいです。
全員が、明細書を作成していたと仮定したととしても、ひとり100件を、単純計算では書かないといけません。

でも月8件って、厳しいですよね、特定の企業の特定の分野の仕事を、集中して対応する、大量生産するスキルが必要です。
もちろん、登録している弁理士の中には、経営者や商標・意匠の専門の弁理士もいたでしょうし、明細書作成補助の方もいるので、正確な数字はないですが、それでも相当忙しい時期だっと思います。
これからは、さらに様々な知財の仕事が増えてくると思います。

イロイロな知財の仕事がある

士業の業界では、業務を有資格者に独占させる前提なんだから、無資格者に新しい仕事が増えていく可能性は低いんではないか、と思われるかもしれません。
しかし、事業環境が変化する中で重要度を増す知財を、多くの専門家で支えていこうという流れが、知財業界で起こりつつあります。

知的財産管理技能検定、ビジネス著作権検定、知的財産翻訳検定、AIPE認定知的財産アナリストなど、さまざまな専門家が生まれつつあります。
知財の業界で、弁理士試験をまず受けようと考えるのは、時代遅れになるかもしれません。
資格は何でもよいですが、どんな仕事をしたいか、だと思います。

海外で、知財の仕事をしていると、日本の知財の仕事は、硬直的で限定的です。
もっと、知財には、イロイロな仕事があるのになあ、と、日本の知財業界を見ていると感じてしまいます。
でも、日本の知財業界で、ずっと働いてきている人たちでは、もうわかんないのかもしれませんよね。

他の資格にチャレンジするか、それとも、資格がいらない仕事にチャレンジするか

だから、弁理士だけでやっていけないから、弁護士を取ろうとか、難しい資格にチャレンジしようとする弁理士も多くいます。
でも、僕だったら、日本の知財訴訟ビジネスは、そんなに伸びていないし、むしろ海外の知財訴訟にも面白い仕事がいっぱいあると思います。
海外の知財案件を扱おうとしたら、別に弁理士じゃなくとも、誰でもよいんですよね。

それと、ブランディングや、ニセモノ品の摘発事業もおもしろそうです。
中国人に日本の知財を買ってもらうのも、楽しそうですよね。
世界中の意匠のスペシャリストも楽しそうです。
日本の意匠制度は、限定的ですが、アメリカや中国は、ぐっと活用性が上がりますしね。

知財の業界で、どのような仕事をしたいのか、まずは考える必要があります。
どのような資格をとるのは、その次で良いのではないでしょうか。
知財の専門家は、資格の勉強をするよりかは、知財ビジネスの勉強をした方が、よいのではないかと思っています。

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